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むかしむかし、ある雪の日のことです。
とある国の一人のお妃様が、黒檀の窓にもたれて、縫い物をしていました。
ふっと舞い降りて来る雪に目を上げた途端、チクリと針の先で指を突いてしまいました。3滴の血がポタポタとこぼれ落ちました。真っ白な雪の上に散ったその赤い色が、お妃様にはとても美しく見えました。
お妃様は独り言を言いました。
「私にあの雪のように白く、血のように赤く、そしてこの窓の黒檀のように黒い子供が生まれたらどんなにか嬉しいことでしょう」
それからしばらくして、お妃様は女の子を産みました。
願いを込めてその女の子には、白雪姫と名付けられました。
けれど身体があまり丈夫でなかったお妃様は、まだ幼い白雪姫に心を残しながら、天に召されてしまったのです。
一年の後、王様は新しいお妃様を迎えました。
新しいお妃様はそれは美しい方でしたが、気位が山のように高く、人に負けるのが何よりもお嫌いでした。特に器量の良さにかけては、自分こそこの国一番だと、信じて疑いませんでした。なぜならお妃様は、不思議な鏡を持っていたからです。
お妃様は毎朝、鏡に映る自分の姿にうっとりしながら、鏡に向かって問い掛けました。
「鏡や鏡、正直者の鏡や。この国一番の器量良しはだあれ?」
すると鏡はいつもこう答えます。
「お妃様、お妃様こそ、この国一番の器量良し」
「お母さますてき。お母さまのように綺麗な方、今まで見たことないわ」
お妃様は子供があんまり好きではなかったのですが、無邪気にはしゃぐ白雪姫に、つい微笑み返したりもするのでした。
「白雪や、おまえもそう思うかい?いい子だねぇ」
「お母さまさっき食べたアップルパイ、もう一切れいただいてもいい?」
「勿論だよ、たんとおあがり」
さて、白雪姫もだんだん大きくなりました。生みのお母さまの願い通り、雪のような白い肌と、血のように赤い唇と、黒檀のように黒い豊かな髪の若い娘になりました。けれど白雪姫は砂糖菓子やアイスクリームが大好きでした。それを我慢する必要もありませんでした。そのせいでぬいぐるみのように、ころころと太っていたのです。もちろんそれはそれで、愛嬌のあるとても可愛らしいお姫様なのですよ。けれどスーパーモデルのBWHを理想とするお妃様と、そのお抱え鏡にとっては、全く問題になるようなお相手ではなかったみたいですね。
今日もお妃様は鏡に向かって問い掛けます。
「鏡や鏡、正直者の鏡や。この国一番の器量良しはだあれ?」
すると鏡はいつものように答えます。
「お妃様、お妃様こそ、この国一番の器量良し」
何年経っても鏡の答は同じです。
お妃様の美しさは、年をとっても変わりませんでした。いつも食べ過ぎないように気をつけていましたし、入浴にはたっぷりと時間をかけました。寝る前のお肌のマッサージも念入りにやりました。その上お妃様は、たくさんの衣装と化粧品をお持ちでした。そうしてひたすら美しさを追い求め、自己満足の毎日を送っていました。
白雪姫もまた、ダイエットには興味も感心も持っていませんでしたので、おいしい物をいつも心ゆくまで食べて、やっぱり満足でした。
月日は平和に過ぎて‥‥‥‥。
年頃になった白雪姫の元に縁談のお申し入れがありました。お相手はさる大国の末の王子様です。俗に言う政略結婚でした。その国には王子が11人もいましたので、いつもお腹を空かせている、優しいだけの末の王子様を、厄介払いをしようと目論んだのです。断わるわけにはいきません。そんなことをしたら戦争になってしまいますからね。けれども白雪姫は、見るからにのんびりした、おなかの大きな王子様を、一目で気に入ってしまいました。子供の頃から大事にしていた、クマのぬいぐるみにそっくりだったからです。結婚式は盛大に行われ、白雪姫も王子様も、王様も国の人達も、みんな幸せになりました。
年老いた王様が亡くなった後、お妃様もまた、若いどこぞの騎士をツバメにして、楽しく平和に暮らしたそうです。
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