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昔、とある国に、王様とお妃様がいました。2人はとっても仲が良かったのですが、なかなか子供に恵まれませんでした。可愛い子供を授けてもらえるよう、毎日神様にお願いしました。
やがて、待望の女の子が生まれみました。
お城ではお姫様の誕生を祝って、盛大なパーティが催されました。
パーティには6人の魔女が招待されました。魔女達はそれぞれに、お姫様を祝福する魔法をかけました。
1人目の魔女は、姫がすくすくと健康に育つように。
2人目の魔女は、姫が優しい人になるように。
3人目の魔女は、姫が小鳥のような美しい声になるように。
4人目の魔女は、姫がビロードのような美しい髪になるように。
5人目の魔女は、姫が素敵な王子と巡り合えるように。
そして、6人目の魔女が、姫にお祝いの魔法をかけようとした時のことです。一人の魔女が遅れてやって来ました。けれど7人目の魔女には、お祝いの席が用意されていませんでした。
「よくもこのわたしを除け者にしたな」
魔女は王様とお妃様を睨み付けて言いました。王様もお妃様も何も言い返すことが出来ません。実はこの魔女は、評判がとても悪かったので、わざと招待しなかったのです。
魔女は恐ろしい声で、姫に向って呪いの言葉を吐きました。
「おまえは18になる前に糸紡ぎの針で死んでしまうだろう」
そうして魔女は高笑いをしながら立ち去りました。
「大変なことになった」
王様は頭をかかえました。
「あの魔女の魔法は強いので解くことは出来ません」
6人目の魔女が気の毒そうに言いました。
「でも死なずにすむようにして上げましょう。百年間眠るのです。百年経てば王子が現れて、姫の魔法を解いてくれるでしょう」
「百年も・・・」
お妃様は涙ぐみました。
次の朝、王様は国中の糸車を全て燃やすよう、おふれを出しました。
姫は何事もなかったかのようにすくすくと育ちました。健康で丸々と太って、誰にでも優しく、小鳥のような美しい声で笑い、ビロードのように美しい髪が自慢でした。
ある日姫が庭で、小鳥のさえずりを聞きながらお菓子を食べていると、コットン、カラカラという不思議な音が聞こえて来ました。
「何の音かしら」
音は高い塔の方から聞こえて来るようです。姫は導かれるように塔の中に入り、長い階段を上って行きました。
塔の一番上の小部屋で、一人のおばあさんが糸を紡いでいました。
「おばあさん、こんにちは」
姫が声をかけると、急にお婆さんが悲鳴を上げて指を押さえました。
「いたたたた。あんたが突然声をかけるから、指をケガしてしまったよ」
「まあ、ごめんなさい。どうしましょう」
お婆さんは言いました。
「これでは糸を紡ぐことが出来ない。すまんが娘さん、代わりにやってはもらえないかね」
姫は戸惑いました。無論、糸車など見たこともありません。けれど自分の責任だと思ったので、おばあさんの言う通りに、糸車に手をかけました。それでなくても、姫はとっても不器用でした。案の定指先に針を刺して、そのまま姫は床に倒れてしまいました。
「ひひひ、上手く行ったわい」
なんとおばあさんは、7人目の悪い魔女だったのです。
倒れた姫はこんこんと眠り続けました。
そこへあの、優しい魔女が現れて言いました。
「百年経って目が覚めた時、一人ぼっちでは可哀想。みんなにも魔法をかけて上げましょう」
魔女が杖を一振りすると、七色の光がお城を包み込みました。王様もお妃様も兵隊もコックも、みんな眠ってしまいました。そして刺だらけの蔦が、お城を覆い隠してしまいました。
こうしてお城は長い長い眠りについたのです。
それから百年が過ぎたある日のこと。
通りかかった隣の国の王子がお城を見上げて、不思議そうに呟きました。
「あの城は、どうしてあんなに荒れ果てているのだろう」
王子は村人に尋ねました。
「お城の高い塔の中に、悪い魔女に魔法をかけられた、美しい姫が眠っているそうです」
村人は答えました。
「なんと可哀想なことを。私がその姫を助け出して上げよう」
早速王子は城へ向いました。
イバラが幾重にも絡み合って、まるで意志を持っているかように、王子に襲って来ました。王子は必死に戦いました。こうなると逆に闘志が涌くのです。まだ見ぬ姫の美しさが、王子を奮い立たせていたのかも知れません。全身傷だらけ痣だらけになりながらも、王子は漸くお城の塔の中へ足を踏み入れました。姫が眠っているのは一番上の部屋です。
「こ、これが百年間眠り続ているという美しい姫・・・」
すやすやと眠っている姫の顔を、まじまじと覗き込んだ王子は、忽ち深い失望感にかられました。可愛いと言えなくもないぽっちゃりした顔立ちでしたが、王子の理想ではありませんでした。まるで騙されたような気分です。くたくたに疲れてはいましたが、王子は考えた末、そのまま立ち去ることにしました。
その時、突然姫の目がぱっちりと開きました。
「まあ、あなたがわたしの王子様」
姫の瞳が輝きました。王子様はもろに姫の好みのタイプだったのです。長い夢から覚めた姫は、逃げ出そうとする王子の腕を、むんずと掴んで引き戻しました。そしてふくよかな胸にしっかりと王子を抱きしめて、熱いキスをしたのです。
実は、既に何人かの王子様がここに来ていたのです。
もう百年はとっくに過ぎていて、誰も起こしてくれなかったので、姫の方が待ちくたびれて目を覚ましてしまったのです。
姫に抱き竦められて身動きが取れなくなった王子様は、魔法が解けて駆け付けた王とお妃様にも祝福され、何が何やらわけの解らないまま、姫と結婚することになってしまいました。
だけど、それはそれで王子は幸せだったようですよ。姫はとても優しくて、美しい髪と美しい声でにこやかに微笑んで、いっぱい子供を生んで、王子を大切にしてくれたのですから。
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