ごうつくばあさんの話

 これは最初に住んだアパートの、大家さんのことです。
 引っ越すことが決まった時、やはり近くの方が通勤にも便利だったので、同じ不動産屋さんに最初に相談に行きました。「前にこちらでお世話してもらったんですが」と事情を話したら「ああ、あのごうつくばあさんのところね」そういうことは借りる時に言ってくれ、借りる時に。

 一般に家賃というのは、最初の月は入居した日からの日数で計算します。出る時は1ケ月以上前に通告して、15日前なら半月分、15日以降なら1ヶ月分支払います。でも最初に借りたアパートでは、特別規約というのがあって、譬え15日前に契約を解除する場合でも1ケ月分支払うと、契約書に書いてありました。それはいいんですけどね。私が入居したのは1月27日。1ケ月分の家賃の30分の1を1日分として、4日分取られました。1カ月は31日あるのに。細かいようですが、ついこんなことも言いたくなるような状況だったんです。契約したのはその1週間前。実はまだ前の借家人が住んでいて、日曜日でないと引っ越しが出来ないという話でした。私も普通のOLだったので、休日でないと引っ越しは無理です。そういうわけで引っ越しは2月に入ってから(最初の日曜日が3日だったので)になると、思っていました。
 ところが5日前に電話がかかって来たんですよ。曰く、今日から入れるようにしたので、今日からの家賃払えってわけです。前の人が出てってすぐ、畳替えとかしたわけですね。だからってねえ。私の方もすぐにお引っ越し、なんてわけには行かないですよ。

 そうそう契約した時、まだ前の人が住んでるにもかかわらず、部屋を見せてくれたんですよ。了解を得ているとは言われましたが、洗濯物の下着はぶら下がってるわお布団は敷きっ放し、というような状態で、了解を得ているとはとても思えなかった・・・。男にだらしないので、こちらから出て行ってもらうことにしたと、そんなことまで話していました。でも、アパートの住人の一人に水商売の人がいて、しかも途中で二人暮らしになった(笑)時は、変な言い訳をしていました。以前私の部屋から出て行ってもらった人はOLだったけど、水商売の人ならだらしなくても、それが普通なのでいいそうです。この話聞いた時は、思わず笑っちゃいましたけどね。要するに家賃を2人分入れて貰ってたらしいのです。何ていうか・・・。

 ここには1年しかいませんでしたが、出た理由は大家さん側の都合です。遠方に住んでいる息子さん夫婦が帰って来るとかで、アパートそのものをやめるということでした。その時点で入居者は、4世帯6人。
 一番長く住んでるという年配の女性にだけは、ちゃんと引っ越し先のアパートも世話して上げたそうですが、1年目の私には無論そこまでしてくれません。毎週末に自分で歩き回って、引っ越し先を探しました。でもなかなか気に入ったところがなくて、約束していた1月末までに引っ越せませんでした。実際に引っ越したのは2月の初めです。
 そこからが問題なのです。2月に入ったんだから、もう1月分払えって言われたんですよ。半月分でしょうと言ったら、契約書を見てないのか、特約という形で、出て行く時にも1月分貰うことになってる。ちょっと待て。それは私の意志で出て行く場合じゃないのか。ハッキリ言って追い出されるんだぞ、こっちは。しかも引っ越し先を世話してくれたわけでもなし。
 あの時のことを思い出すと、今でも頭に来ます。脅されたんですよ、私。あんたからそんなことを言われるとはね。こんな風に出て行ったら、そっちが困るんじゃないのか。電話も手紙も多いみたいだし。暗に揉み潰すと言わんばかり。結局、私の方が謝っちゃったんです。物凄い理不尽だと思いましたが、実際そんなことされたら困りますし。サークルとかいろいろやってて、手紙や電話、本当に多かったんです。けど、御中元やお歳暮以外にも、親の家から貰い物を回してもらっては、しょっちゅうご機嫌伺いしてたんだけどなぁ。あれは一体何のためだと思われてたんだろう。「今度のアパートは入居出来る日ではなて、入居した日からの計算でいいと言われました」私のちょっとばかりの嫌み。「バカだねあんた、そんなこと信用するなんて。騙されてるよ。絶対何かある」という返事が返って来ました。